リビングのドアを開けるとふわっと春風の匂いがする。
カーテンが風と戯れるように舞っていて
「……なつき。」
なつきは確かにそこにいて。
ソファーの上で丸まって寝ていた。
どうやら、風が気持ちよくてそのまま眠ってしまったらしい。
窓を開けっぱなしなところが実になつきらしかった。
癖なのかなんなのか、なつきは体を小さく縮めて、なにかをぎゅっと抱きしめながら寝ていることが多い。
今は、クッションがその餌食に
「夜、うちにもこうしてくれたらええんやけどなぁ」
ついつい、なつきが抱きしめているクッションにやきもちをやいてしまう。
生きてきて、自分がたったひとつのものに執着したことがあっただろうか。
なにもかも捨ててでも、本当に手にいれたかったもの。
なつきのことがなによりも大切なことは昔からかわってないが、今ではなつきが自分の想いに応えてくれてる。互いに向き合えてる。
こんなにも、自分を翻弄できるのは世界でこのコだけだろう。
「なぁーつき。」
そろそろ起こして、一緒に買い物でも行こうかとおもったが呼んでみても眠りが深いようで反応がない。
「起きませんなぁ…まさか、なつき。こないな無防備な格好で寝てはってうちを誘ってはるの?」
顔を真っ赤にして、怒鳴る愛しい恋人の顔が頭の中を横切ってくすくす笑う。
「うちに、こないなさびしい想いをさせて。どう責任とってくれるん?」
怒っていってるつもりなのに、やっぱり笑ってしまう。
漆黒の枝毛一本とない髪を手に取るとさらさらと手から落ちていった。
顔をなつきの目の前に。
すーすーと寝息がかかり、少し頬を赤らめる。
さぁ、まずこのコが目覚めたらなにをしようか。
桜色の唇にくちづけをしようか、それともそれ以上のこともしてしまおうか。
早く、早く目を覚まして。
その透き通った瞳に一番最初にうつるのは自分が良いから。